福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成26年8月1日

選挙権・成年年齢「18歳以上」の是非を問う


国民投票法改正の経緯

平成26年6月13日に、「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」、いわゆる「改正国民投票法」が成立し、6月20日に公布、施行されることとなった。

平成19年、第一次安倍政権時に成立した国民投票法ではすでに憲法改正に関する国民投票年齢を「満18歳以上」と定めており、附則において施行(平成22年)までに公職選挙法、民法等の法令について必要な措置を講ずることとし、それまでの投票年齢を「満20歳以上」とした。しかしながら、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢の引き下げに関しては改正に至るまで法令上の措置が行われることなく、「公務員の政治的行為の制限」や「改憲以外のテーマに国民投票の対象を広げるか」という2点と併せ、議論が先送りされていた経緯がある。

4年後に自動的に国民投票年齢は18歳以上に

今回の改正では、国民投票の投票権年齢を施行後4年を経過するまでの間(平成30年6月20日)に国民投票がある場合は満20歳以上とし、それ以降は満18歳以上となることが定められた。かつ附則において公職選挙法、民法その他の法令の規定について、必要な法制上の措置を講ずることとされている。与野党は2年以内に18歳に引き下げることを目指すと申し合わせており、スピーディに進む可能性がある。

公務員の政治的行為に関しては、裁判官、検察官、警察官などを除き、国民投票運動や意見の表明をすることができることになり、組織的な勧誘運動等については今後、規制の在り方に検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとされた。

教育界に及ぶ多大なる影響

さて、改正法についてはまだ検討事項も多く、広く議論になっているとも言い難い。ただ学校教育には多大なる影響が及ぶと想定できる。選挙権が18歳に引き下がるとなると、高校3年生で国政選挙や地方選挙で投票できることになるが、そのための主権者としての教育が今以上に重要となる。まして国の根幹を左右する憲法改正の投票となると、これまでの教育内容で大丈夫だと言える学校関係者はまずいないだろう。さらに公務員の政治的行為の制限があいまいであることも大きな不安要因だ。組織率が下がったとは言え、いまだ一定の勢力を保つ日教組や全教が特定の主義主張のみを児童生徒に吹き込む可能性も十分に警戒しなければならない。教職員の政治的行為は厳しく制限すべきである。

成年年齢の引き下げとなると、生徒指導上の混乱が起こるのは必至だ。飲酒、喫煙の問題、親権の問題、少年法の問題、消費者としての契約の問題等、考慮しなければならない事柄が噴出する。教育的配慮、及び真に自己に責任を負わせるべき事柄は何かという観点から丁寧に検討する必要性が生じる。

18歳を「大人」にする「志」教育

課題は多いが、現状を振り返ってみる。一頃報じられていた荒れた成人式の様子や社会的自立が困難な若者の増加(もちろん本人のみに責任を帰すことができない場合もある)などを考えてみると、大人としての自立を促す教育の充実を図ることに異論はあるまい。教育の目的は社会の形成者としての資質や教養を涵養し、自立した国民を育てることにある。成年年齢が18歳であれ、20歳であれ、その目的が変わることはないので、積極的にとらえ、高校卒業時に生徒を「大人」にするという目標を家庭や各学校段階で共有し、具体化することによって教育の縦軸を太くすることが肝要であると考える。

そこで提案である。まず、現時点で行われている教育内容を洗い直すことが必要である。現在行われているキャリア教育や道徳教育を「大人」となるための「志」教育として体系化を図るべきだ。また、高等学校では新しい科目「公共」の導入や日本人としての自覚を促すための日本史の必修化(特に近現代史教育の充実)なども検討されている。方向性は賛成である。国民としての誇りや公共の精神は自立した日本人を育成する基盤となるからである。さらに、生徒指導面においても教師側に統一感が生まれ、生徒の自立を促す指導の充実が期待できる。

成人が高校卒業という人生の節目と重なることの意義も大きい。現在でも中学校段階で立志式が行われる場合もあるが、卒業式と同時に成人式という形にすれば一段と「大人」との自覚を持って社会の荒波に立ち向かう覚悟ができるのではないだろうか。
文部科学省は法改正に伴い、本年7月25日、学校教育における憲法に関する教育等の充実を図るよう各都道府県教育委員会に対して通知を出しており、すでに動き出している。私たち「大人」側に「準備と覚悟」があるかが問われている。