平成29年6月5日
教師の働き方改革は子供のために
教員勤務実態調査
文部科学省は四月二十八日、平成二十八年度「教員勤務実態調査」結果の速報値を公表した。平日一日当たりの学内勤務時間の平均は、小学校教諭で11時間15分、中学校教諭で11時間32分となり、平成十八年度に行われた前回の調査に比べ、小学校教諭は43分、中学校教諭は32分の増加となっている(二十八年度調査の「教諭」には十八年度調査で存在しなかった主幹教諭、指導教諭を含む)。土日も小学校教諭1時間7分(前回調査より49分の増加)、中学校教諭3時間22分(同じく1時間49分の増加)となっており、一週間当たりの学内総勤務時間の平均は小学校教諭が57時間25分、中学校教諭が63時間18分となり、それぞれ前回調査と比べ、4時間9分、5時間12分の増加となっている。中学校では「過労死ライン」とされる60時間超えが57.7%である。高等学校においては今回調査されていないが、本連盟が平成二十八年に連盟員を対象に独自に行った調査では、平日一日当たりの平均時間外勤務が3時間45分、週休日等の平均時間外勤務が土曜日4時間59分、日曜日3時間29分となっており、教員の超過勤務は常態化している現実がある。
働き方改革実行計画
教員勤務実態調査速報値公表の約一ヵ月前の平成二十九年三月二十八日、働き方改革実現会議による「働き方改革実行計画」が示された。基本的な考え方として、「働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革である」とある。具体的には「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」、「賃金引上げと労働生産性向上」、「罰則付時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」、「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」「子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労」などの方向性が示されているが、端的に言えば、日本の生産年齢の減少から労働力不足が深刻化することが予測されるため、女性と高齢者の労働市場への参加促進、出生率の向上、労働生産性の向上を実現することを狙ったものだ。その実現のための一つの方策として長時間労働の是正がある。長時間勤務の背景
教科指導、生徒指導、部活動指導等を一体的に行う全人格的教育を目指すという日本型の教育の在り方に加え、複雑化・多様化する課題への対応が求められるようになったこと、さらに生徒指導や生徒の安全管理に関しては法的な対応が強く求められるようになってきたこと等を背景に、勤務時間が膨れあがることになったと考えられる。実行計画が言うように日本の学校文化に対する考え方そのものに手を付けなければ解決しないであろう。解決は可能か
教師は児童生徒の成長のため、また学校の教育力向上のためとあらば勤務時間を気にしない。ゆえに一律な時間外労働の上限規制はなじまないと考える関係者が多いのではないか。ただ、教員の精神疾患による休職者数はここ10年間、約五千人で推移している。また、日本教育新聞(5/22)によれば、過労死した教員の遺族らが、公立学校の教職員の時間外労働に上限を設けるよう求めるネット署名を行っているという。こういった事実は重く受けとめなければならない。労働法制の見直しは必須であり、特に時間外勤務手当の代わりに支給される教職調整額(給料月額の4%)の改善は、現在の業務量に見合った額に改善すべきである。さらに業務の効率化、組織マネジメントによる教師自身の意識改革も必要であるが、もはや限界に達している感があり、やはり教職員定数の改善がなければ根本的な解決は難しいのではないかと考える。現時点での改善策があるとすれば、教員をサポートする専門スタッフの増員は教員の精神的負担の軽減と学校の教育力向上に有効である。併せて、長期的なことであるが、統合的校務支援システムの構築の導入にも期待したい。
教師は環境が整えばさらに力を発揮できる。「すべては子供たちのために」という発想から教師の働き方を考えていくべきである。
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