福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

令和2年1月31日

「変形労働時間制」の導入について

■教員の改正給特法成立
 令和元年十二月四日、公立校教員の勤務時間を年単位で調整できる「変形労働時間制」の導入を盛り込んだ改正教職員給与特別措置法が、参院本会議で可決、成立した。教員の「働き方改革」の一環で、夏休み期間中に休日のまとめ取りが各自治体の判断で可能となり、原則月四十五時間以内とする残業時間の指針を法的に位置付けるものである。最も早い自治体では令和三年度からの導入が見込まれている。この「変形労働時間制」の導入で、学校現場はどのように変わるのだろうか。
■一年単位の変形労働時間制
 この制度は、一年間平均して一週間当たりの勤務時間が四十時間を超えない範囲で、同年内の特定の週において四十時間以上、特定の日において八時間以上の勤務をさせることができる制度である。実際の学校現場では、多くの教師が児童・生徒の登校前に出勤し、部活動指導等を終え、児童・生徒の下校後に退勤する。学期始めや学校行事等で忙しい時期に短時間、勤務時間が伸びたとしても、時間外勤務の削減には繋がるが、教師の働き方に大きな変化は生じないように思われる。
 しかし、夏休み期間中に休日のまとめ取りが可能になることで、教師にとってプラスの効果が見込まれる。
■現在の教師に必要なもの
 教師に必要なものとして、「教科の専門性」や「生徒指導力」等が挙げられる。確かに日々の授業研究に励み、児童・生徒と真摯に向き合っていれば、教師としての指導力は増すにちがいない。しかし、目の前で向き合っている児童・生徒は将来様々な生き方を選択するのであり、多様な児童・生徒の成長を支えるためには、教師も社会に対する様々な知見や豊かな経験が必要ではないだろうか。夏休み期間中の休日にはしっかりと休むのもよいだろうが、知見を深め、経験を積むための時間に活用することも、教師として自身の成長に繋がる良い機会となる。
■勤務時間の割振りについて
令和元年十一月、福岡県教育委員会は、県立学校長宛に「勤務時間の割振り」に関する通知を出した。その通知は次のような内容である。
「県立学校職員の勤務時間等に関する取扱要領には、『校長は、月曜日から金曜日までの五日間において、一日につき七時間四十五分の勤務時間をあらかじめ割り振るものとする』と定めているが、これは、職員全員について一律に勤務時間を割り振ることを意味するものではない。職員全員の勤務開始・終了時間を必ずしも一律とする必要はなく、校務運営上必要と認められる場合は、個々の職員について割振りを行うことも可能である。これにより、曜日ごとに遅番の職員を定めるなど、いわゆるシフト制をとることも可能である。」
シフト制の導入は、全日制の場合、時間割作成上の問題もあり、困難な面もあるが、教職員の働き方改革のための一方策ではないだろうか。実際に福岡県教育委員会は、改めて現行の規定で、シフト制導入が可能であることを周知しようとしている。
■理想的な教師の働き方
「学校」は児童・生徒が集団生活を通して学習し、様々な経験を積みながら成長する場所である。教師は、成長過程にある児童・生徒に向き合うことを最優先に考えるので、教材研究等は、児童・生徒が下校した放課後になり、結果的に時間外勤務が増加する。しかし、教師にとって準備不足の状態で授業に臨むことほど、ストレスに感じるものはない。
今回の「変形労働時間制」の導入が一つの契機となり、夏休み期間中、教師の主体的かつ広範な自己研鑽が進むと同時に、学校現場でも様々な形態の働き方が可能になることを期待する。多様な児童・生徒へ、より適切な対応をするためにも、教師集団が余裕と活力、そして幅広い知見と経験を兼ね備える必要があろう。
教師一人ひとりが、ワークライフバランスを保ちつつ、常に前向きな姿勢で児童・生徒に接する。このことが、何より子供たちに良い影響を与え、教師一人ひとりにとっても、理想的な働き方になると考える。