福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成26年9月1日

慰安婦問題、教育現場でも検証を



朝日新聞が慰安婦問題を再検証

朝日新聞が8月5日、6日の朝刊で慰安婦問題の再検証の特集記事を掲載し、今までに何度も繰り返し報じてきた吉田清治氏による強制連行の証言や女子挺身隊と慰安婦の混同などが誤りであったとして撤回した。その一方で「慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質」と論点をすり替えて、「今後も姿勢を変えず追求していく」と述べており、その開き直ったかのような態度に批判が高まっている。

問題化の経緯

この慰安婦に関しては、元々日本でも韓国でも1980年代までは問題として大きく取りあげられることはなかった。事の発端は、1980年代半ば、旧軍人の吉田清治氏が著書『私の戦争犯罪』の中で、旧日本軍が奴隷狩りのように慰安婦の強制連行を行ったかのような体験談を語り、この証言を朝日新聞などが繰り返し報道したことである。吉田氏本人が後に述べているように著書はフィクションであることが判明しても、朝日新聞は今回の再検証まで正式な訂正を行わないまま放置してきた。また、未婚の女性が軍需工場等に動員された女子挺身隊と慰安婦を混同したために、慰安婦の対象となった年齢や人数も、12歳の少女をはじめとする女性が20万人以上強制連行されたという途方もない内容へと誤解、または意図的に捏造されていった。

国内から沸き上がった非難の声は、1990年代には韓国でも次第に世論に火が付き、日本政府への補償問題に発展、日韓関係に不幸をもたらすこととなった。さらに政府が強制性を認めた1993年の河野談話や慰安婦を性奴隷と位置づけた1996年の国連人権委員会の報告にも影響を与え、事実と異なる日本の不名誉が世界中に拡散されてしまった。

教科書にも「従軍慰安婦」の記述

国内の教育現場もこの動きに呼応する形で、中学校社会科や高校の日本史の教科書に「従軍慰安婦」の記述がなされるようになった。中学校社会科の教科書では、今でこそ慰安婦に関する記述はなくなったが、当時は全ての教科書に「従軍慰安婦」「慰安施設」等の記述があった。高校においては、現在でもほとんど日本史教科書に慰安婦に関する記述があり、これらは慰安婦と男性労働者の強制連行を並記して誤解を招く表現となっていたり、はっきりと強要や連行について記載しているものもある。たとえば、山川出版社『詳説日本史B』では、強制連行による鉱山や土木工事の労働に関する記述の脚注に「戦地に設置された慰安施設には、朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)」と記されている。慰安婦が強制連行されたとは明記されていないが、生徒のイメージではこの二つの語句が結びつきかねない。さらに一部の記述が不適切として東京都や神奈川県などで問題となった実教出版の教科書では、「軍が関与した慰安婦問題」というコラムで「慰安婦とは、戦争中朝鮮などアジア各地で若い女性が強制的に集められ、日本兵の性の相手を強いられた人たちのことをいう」と強制連行の表現となっている。こうした教科書を使用すれば、生徒は疑う余地もないまま慰安婦の強制連行を信じることになるだろう。

全力を挙げて事実を世界へ発信せよ

今回の件で、慰安婦強制連行を主張する人々の大前提となる部分が崩れた。もちろん、慰安婦が存在していたことは事実である。生活苦などから親に売られたり、民間業者に騙されて、自ら望まぬ形で慰安婦となった女性たちの悲しみは、推し量って余りある。女性の人権という観点で、現代の価値基準に照らせば問題は多い。しかし、これが問題の本質であれば、世界中の過去と現代の公娼制度について議論すべきであって、戦時中の日本の慰安婦問題に限定して国家の責任を問うことは極めて理不尽である。

少なくとも軍による強制連行の事実に関しては、裏付けとなる客観的な証拠は存在しない。本来、この強制連行があったかどうかが慰安婦問題の最大の争点であり、今後新たな証拠資料が出てこない限り、今回の件で国内的には決着が付いたと言っていいだろう。今後はいかに国際社会の誤解を解いていくかが課題である。政府もジャーナリストも知恵を搾り、全力を挙げて、真実を発信していかなければならない。

教育現場でも問題の検証を

学校でも、長きにわたって、この誤った情報による歴史教育が行われてきたことに対して、総括する必要がある。これまで中学校、高校では、慰安婦の強制連行があったとして教えてきた教師も多いのではないだろうか。教科書記述の改訂も急務だが、まずは教師が正しい歴史認識を持ち、授業において明確に「間違った報道で慰安婦が軍により強制連行されたと国内外で誤解されているが、軍による強制連行の事実は確認されていない」ということを伝えていかなければならない。そして本質的には、「慰安婦問題」は、昭和史の大戦中の問題としてではなく、「軍による強制連行があったとの誤報・誤解から日韓関係をはじめ国際関係に悪影響を及ぼし、我が国および先人の名誉が著しく傷つけられた問題」として平成史でこそ教えるべきである。