令和元年5月15日
「高校は『大学への通過点』ではない」
■教育再生実行会議の提言
本年一月十八日、政府の教育再生実行会議は、高校教育の改革を盛り込んだ提言の中間報告をまとめた。約七割の生徒が通う高校普通科について、画一的な教育を見直す必要性を指摘した。進路や個性に応じて専門性のあるカリキュラムを選べるように、普通科をタイプ分けすることを今後検討するとした。
■高校は「大学への通過点」?
教育改革は小・中学校と大学が先行し、高校は事実上、手つかずになっており、「高校は『大学への通過点』としての位置づけが強まっている」との声も挙がっている。しかし、多くの高校生は高校生活を通して、自立のための様々な経験を積んでいる。教育改革に関して、高校が手つかずになってきたのは、これまでの高校教育が比較的、その機能を果たしてきたからではないだろうか。
■現在の高校教育
中学校を卒業後、約九十八%の生徒が高校へ進学するようになって久しい。高校では生徒たちの進路実現を第一目標に掲げ、社会人として自立するための教育を行っている。上級学校受験や就職試験のための指導に加え、学校行事や部活動等を通して、協働する力やコミュニケーション能力を育成している。最近では多くの高校で、アクティブ・ラーニングを活用して「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指している。普通科、職業学科、総合学科を問わず、高校では生徒の発達段階に応じた知・徳・体の教育をバランスよく実践している。
■高大接続改革への対応
しかし、来年度から大学入学共通テストが導入されるなど、高校現場もこの変化に対応しなければならない。準備の一環として、プレテスト等も行われているが、不透明な部分も多く、対応に苦慮している学校も多い。ただ目の前の生徒たちの進路実現のために、日々努力を続けている教師がいることに間違いはない。
■高校普通科の抜本改革
すでに、多くの高校普通科が独自のコースを設置し、特色化を進めている。政府・自民党が目指す抜本改革は、画一的なカリキュラムを柔軟に見直し、専門性の高い学科とすること、また各校の独自性を高め、生徒が明確な目的を持って学べるようにする狙いがある。これは特色化を目指す高校普通科とベクトルを同じくしている。高校をさらに活性化させる施策の一つになるに違いない。
■中高連携が鍵となる
各学校が独自性を高め、明確な目的を持った生徒を受け入れるためには、しっかりとした広報活動が重要となる。つまり、中学校との連携を一層強め、その高校にふさわしい生徒を入学させることが、高校普通科の活性化に繋がる。さらに中学校での進路指導の重要性が増す。専門性を高めるということは、高校進学後の学びの幅を狭くすることにもなる。「将来就きたい職業は決まっていないので、普通科を選ぶ」ということが難しくなる。中学校時代に確かな進路意識を持って過ごす必要が強まるだろう。
■これからの高校教育
高校普通科の抜本改革を受け、普通科が専門性を有する学科に変わるのであれば、「縦軸」の強化に努めるべきである。つまり、「横軸」である同学年を越え、学科やコースの専門性を生かして、同じ学科やコース内で上級生が下級生にそれまでに学んだことを伝える活動を積極的に取り入れてはどうだろうか。「教える」ためには準備が必要である。自分自身が理解できていれば、相手が理解できるように説明できるとは限らない。縦軸での活動を通して、上級生は自らの理解の度合いに気づくはずである。
■高校の独自性を高める
少子化が進むにつれ、県立学校の募集定員は今後も減少すると見込まれる。この状況下で各学校が独自性を高める取組を実践するためには、学校経営の方向性を示し牽引する学校長が、少なくとも三年は一つの学校に留まる必要があるのではないだろうか。さらに独自性を高める核となる教科やその教員配置については、入学してくる生徒・保護者の信頼を損なうことが無いように配慮しなければならない。
多くの高校生にとって、高校は「大学への単なる通過点」ではない。三~四年という短い期間に、様々な経験をし、それぞれに自尊感情を高めて、次の段階へと、確実な歩みを進めているのである。
本年一月十八日、政府の教育再生実行会議は、高校教育の改革を盛り込んだ提言の中間報告をまとめた。約七割の生徒が通う高校普通科について、画一的な教育を見直す必要性を指摘した。進路や個性に応じて専門性のあるカリキュラムを選べるように、普通科をタイプ分けすることを今後検討するとした。
■高校は「大学への通過点」?
教育改革は小・中学校と大学が先行し、高校は事実上、手つかずになっており、「高校は『大学への通過点』としての位置づけが強まっている」との声も挙がっている。しかし、多くの高校生は高校生活を通して、自立のための様々な経験を積んでいる。教育改革に関して、高校が手つかずになってきたのは、これまでの高校教育が比較的、その機能を果たしてきたからではないだろうか。
■現在の高校教育
中学校を卒業後、約九十八%の生徒が高校へ進学するようになって久しい。高校では生徒たちの進路実現を第一目標に掲げ、社会人として自立するための教育を行っている。上級学校受験や就職試験のための指導に加え、学校行事や部活動等を通して、協働する力やコミュニケーション能力を育成している。最近では多くの高校で、アクティブ・ラーニングを活用して「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指している。普通科、職業学科、総合学科を問わず、高校では生徒の発達段階に応じた知・徳・体の教育をバランスよく実践している。
■高大接続改革への対応
しかし、来年度から大学入学共通テストが導入されるなど、高校現場もこの変化に対応しなければならない。準備の一環として、プレテスト等も行われているが、不透明な部分も多く、対応に苦慮している学校も多い。ただ目の前の生徒たちの進路実現のために、日々努力を続けている教師がいることに間違いはない。
■高校普通科の抜本改革
すでに、多くの高校普通科が独自のコースを設置し、特色化を進めている。政府・自民党が目指す抜本改革は、画一的なカリキュラムを柔軟に見直し、専門性の高い学科とすること、また各校の独自性を高め、生徒が明確な目的を持って学べるようにする狙いがある。これは特色化を目指す高校普通科とベクトルを同じくしている。高校をさらに活性化させる施策の一つになるに違いない。
■中高連携が鍵となる
各学校が独自性を高め、明確な目的を持った生徒を受け入れるためには、しっかりとした広報活動が重要となる。つまり、中学校との連携を一層強め、その高校にふさわしい生徒を入学させることが、高校普通科の活性化に繋がる。さらに中学校での進路指導の重要性が増す。専門性を高めるということは、高校進学後の学びの幅を狭くすることにもなる。「将来就きたい職業は決まっていないので、普通科を選ぶ」ということが難しくなる。中学校時代に確かな進路意識を持って過ごす必要が強まるだろう。
■これからの高校教育
高校普通科の抜本改革を受け、普通科が専門性を有する学科に変わるのであれば、「縦軸」の強化に努めるべきである。つまり、「横軸」である同学年を越え、学科やコースの専門性を生かして、同じ学科やコース内で上級生が下級生にそれまでに学んだことを伝える活動を積極的に取り入れてはどうだろうか。「教える」ためには準備が必要である。自分自身が理解できていれば、相手が理解できるように説明できるとは限らない。縦軸での活動を通して、上級生は自らの理解の度合いに気づくはずである。
■高校の独自性を高める
少子化が進むにつれ、県立学校の募集定員は今後も減少すると見込まれる。この状況下で各学校が独自性を高める取組を実践するためには、学校経営の方向性を示し牽引する学校長が、少なくとも三年は一つの学校に留まる必要があるのではないだろうか。さらに独自性を高める核となる教科やその教員配置については、入学してくる生徒・保護者の信頼を損なうことが無いように配慮しなければならない。
多くの高校生にとって、高校は「大学への単なる通過点」ではない。三~四年という短い期間に、様々な経験をし、それぞれに自尊感情を高めて、次の段階へと、確実な歩みを進めているのである。
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