平成31年2月4日
不登校の児童生徒を学校に戻すために
■不登校の児童生徒数の推移
平成に入り、教育現場でクローズアップされてきたのが不登校問題である。十月末に文科省から平成二十九年度「児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題」の速報値が発表され、不登校の児童生徒数が過去最多を更新した。小・中学校における不登校の児童生徒数が調査開始後、初めて十四万人を超えた。この数値は、平成三年度の倍以上に膨れ上がっている。少子化で児童生徒数が減っているにも関わらず、なぜ不登校が増え続けているのだろうか。
■不登校の原因を探る
文科省は不登校について「年間に三十日以上欠席がある者で、病気や経済的理由による者を除いたもの」と定義づけている。そして、その原因については「複合的な要因が絡み合っているので、原因を特定することは難しい」との認識を示している。確かに不登校の原因は、その子供によって様々であろう。だからこそ、それぞれの原因や背景を丁寧に分析して初めて、不登校の児童生徒を学校に戻す第一歩を踏み出すことになるのではないだろうか。
高等学校においても、不登校の生徒への対応は、担任だけでなく、その生徒が所属する学年をはじめ、生徒指導部や外部支援員がチームで当たる。不登校の原因を探るために、保護者はもちろん、必要に応じてクラスメートや出身中学校の先生にも協力を要請することがある。そして、決して欠かすことのできないものが、「家庭訪問」である。
■「家庭訪問」が難しい時代
福岡県の公立高等学校では、一部の地域を除いて、家庭訪問期間等を設けていない。学期末に三者面談期間を設けて、保護者に学校へ出向いてもらう形式を取る学校が多い。そのため家庭訪問は「特別な場合に行われるもの」で、「家庭訪問をする場合は、できる限り複数の教員で当たる」「保護者が不在の時は、生徒への指導は玄関先で行う」など、様々なルールを設けている学校も少なくない。不登校の原因を探るうえで欠かすことのできない「家庭訪問」であるが、教師がそれぞれの感性と判断を働かせて「帰宅途中にちょっと寄ってみるか」とはいかない時代になりつつある。
■保護者に寄り添う
しかし、不登校問題に直面している保護者も、不登校の状況の改善を望まないはずはない。学校と家庭が協力して、児童生徒を学校に戻す努力をしている。保護者の話に教師をはじめ外部支援員も耳を傾け、保護者に寄り添う。連絡を密に取り、定期的に家庭訪問を行う。生徒に会えないこともあるが、保護者からその生徒の様子を聞き取るだけでも、生徒理解につながる。そのような一つ一つの積み重ねが、不登校の生徒を学校に一歩近づけることになる。
■学校に戻すことを最優先に
開善塾教育相談研究所顧問の金澤純三氏は、全国の不登校の子供たちや、その保護者への訪問相談を行っている。金澤氏はある機関誌の記事において、不登校を続けると結局は引きこもりになる可能性が高く、引きこもりも五年ほど続くと、経験上、社会復帰は難しくなることが多いと述べている。さらに、そのような子供たちを元気にするための最善の策は「帰属意識を持たせること」ではないかとも述べている。
■帰属意識を持たせるために
人は社会的動物と言われている。人間関係構築の段階で、様々な困難を抱えたとしても、人とのふれあいの中で生活する方が、幸せを感じるはずである。学校という社会から距離を置こうとする不登校の児童生徒に、その学校で帰属意識を持たせることは難しいことかもしれないが、開善塾では、その帰属意識を合宿生活で育てているという。元小学校の校舎を借りて合宿を行い、子供たちが様々な経験を積める工夫をしている。このような活動をヒントに、私たちも児童生徒を学校に戻す新たな取組を始めることはできないだろうか。
■学校間での連携を
児童生徒の問題行動や不登校に関しては、それぞれの学校が独自に対応しているのが現状であろう。しかし、この現状を打開するためには、学校間での情報交換や成功事例の共有などが、早急に必要ではないだろうか。児童生徒が、幸せな社会人として生きていく力をつけるために、学校間の連携を強化しなければならない。
平成に入り、教育現場でクローズアップされてきたのが不登校問題である。十月末に文科省から平成二十九年度「児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題」の速報値が発表され、不登校の児童生徒数が過去最多を更新した。小・中学校における不登校の児童生徒数が調査開始後、初めて十四万人を超えた。この数値は、平成三年度の倍以上に膨れ上がっている。少子化で児童生徒数が減っているにも関わらず、なぜ不登校が増え続けているのだろうか。
■不登校の原因を探る
文科省は不登校について「年間に三十日以上欠席がある者で、病気や経済的理由による者を除いたもの」と定義づけている。そして、その原因については「複合的な要因が絡み合っているので、原因を特定することは難しい」との認識を示している。確かに不登校の原因は、その子供によって様々であろう。だからこそ、それぞれの原因や背景を丁寧に分析して初めて、不登校の児童生徒を学校に戻す第一歩を踏み出すことになるのではないだろうか。
高等学校においても、不登校の生徒への対応は、担任だけでなく、その生徒が所属する学年をはじめ、生徒指導部や外部支援員がチームで当たる。不登校の原因を探るために、保護者はもちろん、必要に応じてクラスメートや出身中学校の先生にも協力を要請することがある。そして、決して欠かすことのできないものが、「家庭訪問」である。
■「家庭訪問」が難しい時代
福岡県の公立高等学校では、一部の地域を除いて、家庭訪問期間等を設けていない。学期末に三者面談期間を設けて、保護者に学校へ出向いてもらう形式を取る学校が多い。そのため家庭訪問は「特別な場合に行われるもの」で、「家庭訪問をする場合は、できる限り複数の教員で当たる」「保護者が不在の時は、生徒への指導は玄関先で行う」など、様々なルールを設けている学校も少なくない。不登校の原因を探るうえで欠かすことのできない「家庭訪問」であるが、教師がそれぞれの感性と判断を働かせて「帰宅途中にちょっと寄ってみるか」とはいかない時代になりつつある。
■保護者に寄り添う
しかし、不登校問題に直面している保護者も、不登校の状況の改善を望まないはずはない。学校と家庭が協力して、児童生徒を学校に戻す努力をしている。保護者の話に教師をはじめ外部支援員も耳を傾け、保護者に寄り添う。連絡を密に取り、定期的に家庭訪問を行う。生徒に会えないこともあるが、保護者からその生徒の様子を聞き取るだけでも、生徒理解につながる。そのような一つ一つの積み重ねが、不登校の生徒を学校に一歩近づけることになる。
■学校に戻すことを最優先に
開善塾教育相談研究所顧問の金澤純三氏は、全国の不登校の子供たちや、その保護者への訪問相談を行っている。金澤氏はある機関誌の記事において、不登校を続けると結局は引きこもりになる可能性が高く、引きこもりも五年ほど続くと、経験上、社会復帰は難しくなることが多いと述べている。さらに、そのような子供たちを元気にするための最善の策は「帰属意識を持たせること」ではないかとも述べている。
■帰属意識を持たせるために
人は社会的動物と言われている。人間関係構築の段階で、様々な困難を抱えたとしても、人とのふれあいの中で生活する方が、幸せを感じるはずである。学校という社会から距離を置こうとする不登校の児童生徒に、その学校で帰属意識を持たせることは難しいことかもしれないが、開善塾では、その帰属意識を合宿生活で育てているという。元小学校の校舎を借りて合宿を行い、子供たちが様々な経験を積める工夫をしている。このような活動をヒントに、私たちも児童生徒を学校に戻す新たな取組を始めることはできないだろうか。
■学校間での連携を
児童生徒の問題行動や不登校に関しては、それぞれの学校が独自に対応しているのが現状であろう。しかし、この現状を打開するためには、学校間での情報交換や成功事例の共有などが、早急に必要ではないだろうか。児童生徒が、幸せな社会人として生きていく力をつけるために、学校間の連携を強化しなければならない。
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