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Opinion

平成29年11月9日

【教育テーマ論点整理】 「大学入学共通テスト実施方針策定にあたっての考え方」について



 前回は「高校生のための学びの基礎診断」の実施方針を取り上げたが、今回は同日の7月13日に文部科学省が公表した高大接続改革の実施方針等の概要をまとめる。

名称は「大学入学共通テスト」

 大学入試センター試験に代わる新たなテストの制度設計については高大接続システム改革会議の「最終報告」を踏まえ、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループにおいて検討が進められてきたが、名称は最終的に「大学入学共通テスト」(以下、「共通テスト」)となった。これは大学入学希望者の共通の学力評価という内容面とともに、利用大学が共同実施する共通テストという実施面の双方の性格を端的に表象するためとしている。

目的・実施主体・実施スケジュール

 これまでの大学入試センター試験では「高等学校における基礎的な学習の達成の程度」を判定することが目的とされていたが、それを前提としつつ、大学教育を受けるために必要な能力について把握することを明確にしている。併せて知識・技能とともに、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を評価する観点も明確にしている。
 実施主体は現行のセンター試験同様、大学入試センターが一括して処理する業務を行うものとしている。なお、「共通テスト」の目的に応じた作問体制の転換が必要であることを踏まえ、センターの作問方針、作問体制の抜本的な見直しを図り機能を強化するとしている。
 実施スケジュールについては、中央教育審議会答申(平成26年12月)、高大接続改革実行プラン(平成27年1月)、及び高大接続システム改革会議の「最終報告」により示されたスケジュールに沿って、実施開始年度は平成32年度とし、次期学習指導要領に基づくテストが実施される平成36年度以降の実施方針については、平成33年度を目途に策定・公表する。なお、本年度、5万人規模のプレテスト、30年度には10万人規模のプレテスト、実施開始年度の前年となる31年度には「実施大綱」を策定・公表し、確認プレテストを行う予定としている。

記述式問題は当面、国語と数学

 これまで議論されてきた記述式問題については「国語総合」、「数学Ⅰ」が現行の学習指導要領で共通必履修科目として設定されていることから、「国語」、「数学Ⅰ」、「数学Ⅰ・数学A」において出題される。ただし、その導入の状況を検証し、次期学習指導要領においては「歴史総合」、「地理総合」、「公共」が共通必履修科目となることから、平成36年から地理歴史、公民分野や理科分野等でも記述式問題を導入する方向で検討されることとなる。
 国語は主題範囲を「国語総合」(古文・漢文を除く)として、多様な文章や図表などをもとに、複数の情報を統合し構造化して考えをまとめたり、その過程や結果について、相手が正確に理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価する。設問において一定の条件を認定し、それを踏まえ結論や結論に至るプロセス等を解答させる条件付記述式とする。「言語活動」の充実、「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を促していくメッセージとなること、また大学教育の改革充実への好影響となることもねらっている。作問検討チームではテクストを踏まえて発展させた自分の考えを解答する問題も検討されたが、解答の自由度が高いことから個別選抜で出題することが望ましいと判断された。
 数学はこれまでのセンター試験では「与えられた問題解決の過程を再現する力」を測る問題にとどまっていたとの認識から、「数学」を活用した問題解決に向けて構想・見通しを立てる能力の評価を重視するとしている。
 採点については各大学が採点する案を含め、様々検討が重ねられたが、日程や体制の問題、採点の不統一の観点から、作問、出題、採点は大学入試センターが行うことになった。ただし、多数の答案を短時間で正確に採点するため、その能力を有する民間事業者を有効に活用することとした。

英語は4技能評価、認定試験は高3の4月~12月の間の2回まで

英語は民間事業者等により広く実施され、一定の評価が定着している資格・認定試験を活用。そのうち内容、実施体制等が入学者選抜に活用する上で必要な水準及び要件を満たしているものを「認定試験」とし、その試験結果及びCEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)の段階別成績表示を要請のあった大学に提供するしくみとなる。高校3年の4月~12月の間の2回までの試験結果を各大学に送付する。なお、共通テストの英語試験も平成35年度まで実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験いずれか、又は双方を選択利用できる。

 共通テストの日程は高等学校の教育活動への影響を配慮し、1月中旬の2日間、成績提供時期は現行の1月末から、1週間程度遅らせる方向で検討する。

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