福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成2706

教育テーマ論点整理 アクティブ・ラーニング(2)~定義について



教育再生実行会議第七次提言に見るアクティブ・ラーニング

 
前回はアクティブ・ラーニングの背景を探り、大学教育の質的転換を求める中からその用語が一般化し、高等学校教育へも広がっていることに触れた。今回はその定義であるが、その前に平成27年5月14日に教育再生実行会議より第七次提言としてとりまとめられた「これからの時代に求められる資質・能力とそれを培う教育、教師の在り方について」を見ておきたい。まずこの提言の基底にあるのがこれから先の社会の変化が過去とは比べものにならないほどスピードのついたものとなるという予測である。さらにコンピューターの能力が人間の能力を上回るとの予測もあることに触れ、人間が優位性を持つ資質・能力を磨き、高めること、例えば正解のない課題に挑戦すること、創造性や高い専門性、人間の感性や思いやり等の価値を高める必要があるとしている。そしてこういった資質・能力を高めるために体験型・課題解決型の学習が必要であり、教育内容・方法の抜本的な革新が不可欠であるとして、課題解決に向けた主体的、協働的で、能動的な学び(アクティブ・ラーニング)へと授業を革新することを提起している。留意点として学習評価の在り方を見直すこと、大学入学者選抜改革と一体的に推進すること、指導方法を画一的、限定的に定め、特定の型どおりに指導するといった硬直性を生まないようにすることなどが挙げられていることに注目したい。

「質的転換答申」用語集による定義


 さて、定義である。先にあったとおり、硬直的であってはならないが、実践者にとっては一定の概念や定義が共有されなければ先に進むことはできない。まず、前号で挙げた「質的転換答申」の用語集の定義を確認する。
「教員による一方的な講義形式とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」
 注目したいのは汎用的能力の育成という点である。高等学校教育に当てはめて考えてみると、教科の学力に加え、教科の枠を超えて激変する未来の社会に生きる子供に備えさせたい資質・能力の育成を狙っているということである。前回、学校の実態に合わせ、ゴール像を設定し、育成すべき人物像について議論すべきという趣旨のことを書いたが、それはこの汎用的能力の育成のためには学校目標とマッチさせる視点が必要だと考えたからに他ならない。また、後半部分の発見学習以下は現学習指導要領の言語活動の充実の視点から捉えることが可能ではないかと考えるところである。

聴くことは能動的なのか?


 先の定義では一方的な講義形式を否定しているように見える。しかし講義も思考を伴うものであり、能動的学習と捉えることができるのではないかという意見がある。これに対し、京都大学高等教育研究開発センター教授の溝上慎一氏の定義は次のようになる。
 「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。」『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』(東信堂、2014)

アクティブラーニングのための二重表現


 溝上氏によれば学習はそれ自体「行為(action) 」である。その意味で学習は常に能動的(active)なものであり、受動的(passive)な学習なるものは論理矛盾であって、存在しないという批判もあることに触れているが、この場合の「『能動的/受動的』は、行為それ自体の性質的な特徴、『より能動的な』『より受動的な』を指す言葉として理解されなければならない」としている。そして学習を「能動的/受動的」と形容するためには、相対的な位置を知るための基準が必要であり、その基準を定義の前半部で「一方的な知識伝達型講義を聴くという学習」(=受動的学習)として示している。その基準からみて能動的な特徴を示すものがアクティブラーニングということになる。また、定義によれば書く・話す・発表するといった活動への関与と聴くだけの場合にはあまり働かせていない認知プロセス(知覚・記憶・言語・思考【論理的/批判的/創造的思考、推論、判断、意思決定、問題解決など】が絡み合っていることがアクティブラーニングの条件ということになる。これは活動させればそれで良しというような実践が少なからずあることから、「活動への関与」とともに「認知プロセスの外化」という二重表現となると説明している。またあらゆる能動的な学習の「あらゆる」とアクティブラーニングを最広義で定義していることの含意として、教授パラダイムから学習パラダイムへの転換を少しでも多くの教員に促すためとその意図を述べている。