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私たちの主張

Opinion

平成30年11月21日

学力の三要素を育成する高等学校教育へ

■高大接続改革の推進
 グローバル化、情報化の進展や生産年齢人口の急減など、社会構造の急激な変化に対応するため、「学力の三要素」を育成するとともに、そのプロセスとしての教育活動を適切に評価し、改善していくことが求められている。この喫緊の課題を解決するため、現在、高大接続改革が推進されている。平成二十六年十二月の高大接続改革に関する中教審答申では「学力の三要素」を次のように設定している。

①知識・技能の確実な習得
②(①を基にした)思考力・判断力・表現力
③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

これまでの高等学校教育では、①に重きを置きすぎていたという指摘があり、①を基にした②や③の育成に、徐々に力点が置かれ始めた。その最たる例が「アクティブ・ラーニング」である。
さらに③の育成に向けては、この六月に新たな基本方針が閣議決定され、「地方創生」というキーワードが加わった。
■地方創生に資する高等学校改革の推進
本年六月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針二〇一八」において、「高等学校は、地域人材の育成において極めて重要な役割を担う」「高等学校段階で地域の産業や文化等への理解を深めることは、その後の地元定着やUターン等にも資する」「高等学校が地元市町村・企業等と連携しながら、探究的な学びを提供するカリキュラムの構築等を行う取組を推進する」としている。これは③の「多様な人々と協働して学ぶ態度」の育成につながるものである。この基本方針では「地域振興の核として高等学校教育の質の向上に取り組む」とし、地方創生の中心に高等学校教育を位置付けており、義務教育修了段階の高等学校が、かつてないほど重視されている。我が国の将来像を考える上で、高等学校教育への期待がいっそう増していると言ってもよい。
■「主体性」を育む
地方創生の核とはいえ、学校はあくまでも教科を通した学習活動を中心として成り立つ場である。知識・技能の確実な習得のためには、ある程度の時間と演習が必要である。習得した知識・技能を基に思考・判断し、さらに表現するには、それらを実践できる場面設定が必要である。そして「主体性」の実現が学習活動上、最も難しいのかもしれない。地域に開かれたカリキュラムを通して、多様な人々と協働して学ぶ場面を用意することができれば、効果的に「主体性」を涵養することが可能ではないか。
■そもそも「主体性」とは
 「主体性」とは、確たる意志や責任ある判断に支えられた態度のことを言う。この態度はただ単に「自己主張できる」「自分で決められる」というレベルのものではない。確たる意志や判断の基盤には、自らを育み形作ってきた風土、文化、歴史へのまなざしがあり、あるいは自らを取り巻く環境の抱える課題に向けた意識があり、そういうものが相まって初めて「主体性」が生まれるものではなかろうか。カリキュラムを地域に開き、地域の人々と協働して学ぶ意義もそこにあると思われる。
また「主体性」とは、物事に取り組む過程で得られた成功体験や自己有用感に支えられるものである。誰しも自信がないものに対しては、積極的に臨めない。「なんとかうまくやれるはず」という支えがあって、主体的に臨めるのである。つまり「できる」「分かる」という体験を積ませ、褒め、あるいは感謝の言葉をかけることが、生徒たちの「主体性」を育むことに繋がるのである。
■高等学校教育改革
高等学校はこれまでも「学力の三要素」育成に取り組んできたが、これからは地域の関係者と緊密に連携し、地域一丸となって取り組んではどうだろうか。未来を担う高校生が最も身につけるべきものは「主体性」であろう。主体的な学びを教室だけでなく地域でも展開していく。その学びは明白な「解答」のない学びかもしれないし、試行錯誤の連続かもしれない。しかしある程度生徒に任せてみる。これからの高等学校は地域とともに、主体的に活動する生徒達を「見守り、待つ」ことが大切になるのかもしれない。教師側の姿勢も、当然変えなければならない。

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