矢ヶ部大輔前執行委員長の後任として、第16代執行委員長を務めることになりました藤野英二です。よろしくお願いいたします。25年間の福岡県立高校での勤務経験を活かして、子供たちの成長のため、私たち教師が何をなすべきか、しっかりと発信していきたいと思います。
私が小学生の頃、母親に「マンガばかり見てないで、たまにはニュースを見なさい」と、よく言われたものです。しかし、今の私は、小学生の娘に「アニメばかり見てないで、ニュースを見なさい」とはなかなか言えません。いつの頃からか、子供には見せたくないニュースが、あまりにも多くなったように感じます。報道の在り方が変わったのかもしれませんが、この30年間、痛ましい事件や反社会的な犯罪が急増したのは、なぜでしょうか。
その原因は様々かもしれませんが、この30年の間に大きく変わったとすれば、「一人の子どもに関わる大人の数」ではないでしょうか。私が子どもの頃には、祖母が同居していました。親戚の叔父、叔母からも、様々なことを教わりました。今の子供たちには、真剣に向き合ってくれる大人が、以前に比べると少なくなっていると思います。核家族化が進み、「個人」が尊重される一方で、「自己責任」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。
私が以前、担任をした生徒がこんな言葉を発しました。「人生は一度しかないのだから、自己中心で生きないと損」いつの間にか、世の中にこんな考え方が増え始め、「オレオレ詐欺」のような犯罪が後を絶たなくなったのかもしれません。
このような状況下、小・中学校では「道徳」の教科化がなされ、高等学校には「公共」という科目が新設されました。その他にも集団生活の場である「学校教育」の中には、私たちにできること、すべきことが必ずあると考えます。子供たちへの教育がより正常化すれば、将来の日本が、より安心して暮らせる社会になると信じて、私たち教師が、いっそう子供たちと向き合う姿勢を正していかなければなりません。
一方で、教育現場でも「働き方改革」が動き始めました。私たちの健康面や生活面をお考えいただいてのことなので、ありがたいことだと思います。ただ、目の前の子供たちを抜きに、私たち教師の「働き方改革」はありえません。
多くの職業がある中で、私たちの多くが「教師」という職業を選んだ理由は、「子供たちの成長を間近で実感できる」からだと思います。授業や部活動、学校行事を通して、子供たちは着実に成長します。そんな姿を見たいから、私たちは授業準備に励み、部活動の指導に当たり、子供たちとともに学校行事を作り上げるのです。子供たちの達成感に満ちた表情が、私たちに新たな力を与えてくれます。
そんな私たちの「やりがい」や「喜び」を削ぐ「働き方改革」であれば、効果的なものとは言えません。私たちは「人」を育てています。それぞれの子供たちをどのように指導したら、しっかり成長するか、様々な工夫をすることも、私たち教師の醍醐味です。
私たち福岡教育連盟の強みは、学校や教科、世代を超えて、多くの先生方と出会えることです。その「出会い」を、子供たちを成長させる「力」に変えて、自信を持って、子供たちを導いています。
「他人と過去は変えられない。」と言われますが、私たち教師は、子供たちを成長させなければなりません。変えられないまでも、自ら変わろうという意識を持たせることはできます。
「教育は難しい」と感じている方もいるでしょう。難しいからこそ、1人で取り組むのではなく、組織で取り組むのです。学校だけではなく、家庭や地域でも情報交換を行い、子供たちの成長に、「何が最善か」を見極めるのです。私たち教師は、「教育専門職」です。様々な人と出会い、今後の子供たちについて語り合う。このような活動が、私たちを教師として成長させてくれると、確信しています。