平成31年3月15日
『学校へのスマホ持込の是非」
■小中学校へのスマホ持込可
本年二月十八日、大阪府教育庁が「小中学校における携帯電話の取扱いに関するガイドライン」(素案)を発表した。それによると、四月から公立の小中学校への携帯電話の持込禁止を「一部解除」するとのことである。学校内での使用は原則禁止だが、持込を許可し、各自のカバンに保管するというものである。
■文科省も見直しへ
この発表の翌日、柴山昌彦文部科学大臣は、携帯電話やスマートフォン(スマホ)について「小中学校への持込を原則禁止」「高校は校内での使用を禁止」という従来の指針を見直す方針を明らかにした。現在、子供の携帯電話・「スマホ」の保有率が上がり、災害時の対応などへの懸念も出ていたため、従来の指針が時代に合わなくなってきたとの声もある。
■外国の学校における対応
フランスは昨年九月、すべての幼稚園と小中学校内で「スマホ」などの使用を原則禁じる法律を施行した。学習に集中させるとともに、校内での盗難やネット上の人間関係のトラブルを防ぐなどの狙いからである。その一方、授業で積極的な利用を呼びかける国もあり、「スマホ」と教育との関係は模索が続いている。
■高等学校における対応
福岡県内でも地域によって、「スマホ」の対応には差がある。私立高校は持込禁止としている学校も多い。しかし、実際には多くの生徒がカバンの中に携帯電話等を入れて登校していると聞く。ICTの活用が推進される中、「スマホ」の学校内への持込禁止は難しいという声も少なくない。
高大接続改革に伴い、二年後の大学入試から調査書の様式が様変わりする。高校での活動記録が大学入試での選考材料になることを受けて、生徒に各自の「スマホ」を持参させ、e-ポートフォリオの活用方法を説明し、実際に各自の「スマホ」で作業する学校も増えてきた。
■「スマホ」適応年齢
料理に欠かせない「包丁」を三歳児に持たせる大人はいない。三歳児には危険だと理解できているからだ。「災害時の対応のために」とはいえ、小中学生に「スマホ」を持たせることは、逆に日常のトラブル要因をつくる危険性を上げることになりはしないだろうか。高校現場でさえ、SNS等での生徒間のトラブルが絶えない状況にあることを考えると、小中学生が「スマホ」を適切に使いこなせる年齢とは言い難い。文科省は来年度、これまでの指針を見直すとしているが、慎重な審議が必要ではないか。
■スマホの影響力
「スマホ」が普及し始めて、社会は大きく変わった。電車やバスの中では、見渡してみるとほとんどの人が「スマホ」を使用している。旅行先で、道を尋ねることも少なくなった。電話に出なかったり、メールへの返信をしなかったりすると、その後の人間関係に響くこともある。一方で、瞬時に世界中の情報を確認することもできるなど、便利な部分も多い。いずれにしても、社会を激変させている「スマホ」が、小中学校に入ってくると、当然学校も大きく変わるであろう。依存性の高い「スマホ」を各自で管理させ、小中学生がルールを守ることができるだろうか。高等学校の現状からすると、非常に難しいと言わざるを得ない。学校現場の先生方の業務は増えるだろう。
■Society5.0の実現に向けて
いわゆるSociety5.0、つまり「サイバー空間と現実空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」の構築に向けて、今後社会全体が動いていくのであれば、サイバー空間と現実空間の接点にあるICTの活用能力は、これからの時代を生き抜く子供たちにとって必須の能力となる。我が国のこれからの発展と繁栄を期するのであれば、ICT教育を子供たちの手持ちの、しかも人間関係のトラブルを誘発しかねない「スマホ」に頼るのでは心許ない。未来への投資としてしっかりと予算をかけ、学校教材にふさわしいタブレットを準備するべきである。ICT教育の充実と災害時等の緊急対応はそもそも別次元の問題であり、切り離して考えるべきである。緊急対応を懸念するのであれば、児童生徒向けには通話やGPS機能に限定した「スマホ」を開発し、社会全体に普及させるなど、関係企業、教育界が連携して真剣に議論すべき時がきているのではないか。
本年二月十八日、大阪府教育庁が「小中学校における携帯電話の取扱いに関するガイドライン」(素案)を発表した。それによると、四月から公立の小中学校への携帯電話の持込禁止を「一部解除」するとのことである。学校内での使用は原則禁止だが、持込を許可し、各自のカバンに保管するというものである。
■文科省も見直しへ
この発表の翌日、柴山昌彦文部科学大臣は、携帯電話やスマートフォン(スマホ)について「小中学校への持込を原則禁止」「高校は校内での使用を禁止」という従来の指針を見直す方針を明らかにした。現在、子供の携帯電話・「スマホ」の保有率が上がり、災害時の対応などへの懸念も出ていたため、従来の指針が時代に合わなくなってきたとの声もある。
■外国の学校における対応
フランスは昨年九月、すべての幼稚園と小中学校内で「スマホ」などの使用を原則禁じる法律を施行した。学習に集中させるとともに、校内での盗難やネット上の人間関係のトラブルを防ぐなどの狙いからである。その一方、授業で積極的な利用を呼びかける国もあり、「スマホ」と教育との関係は模索が続いている。
■高等学校における対応
福岡県内でも地域によって、「スマホ」の対応には差がある。私立高校は持込禁止としている学校も多い。しかし、実際には多くの生徒がカバンの中に携帯電話等を入れて登校していると聞く。ICTの活用が推進される中、「スマホ」の学校内への持込禁止は難しいという声も少なくない。
高大接続改革に伴い、二年後の大学入試から調査書の様式が様変わりする。高校での活動記録が大学入試での選考材料になることを受けて、生徒に各自の「スマホ」を持参させ、e-ポートフォリオの活用方法を説明し、実際に各自の「スマホ」で作業する学校も増えてきた。
■「スマホ」適応年齢
料理に欠かせない「包丁」を三歳児に持たせる大人はいない。三歳児には危険だと理解できているからだ。「災害時の対応のために」とはいえ、小中学生に「スマホ」を持たせることは、逆に日常のトラブル要因をつくる危険性を上げることになりはしないだろうか。高校現場でさえ、SNS等での生徒間のトラブルが絶えない状況にあることを考えると、小中学生が「スマホ」を適切に使いこなせる年齢とは言い難い。文科省は来年度、これまでの指針を見直すとしているが、慎重な審議が必要ではないか。
■スマホの影響力
「スマホ」が普及し始めて、社会は大きく変わった。電車やバスの中では、見渡してみるとほとんどの人が「スマホ」を使用している。旅行先で、道を尋ねることも少なくなった。電話に出なかったり、メールへの返信をしなかったりすると、その後の人間関係に響くこともある。一方で、瞬時に世界中の情報を確認することもできるなど、便利な部分も多い。いずれにしても、社会を激変させている「スマホ」が、小中学校に入ってくると、当然学校も大きく変わるであろう。依存性の高い「スマホ」を各自で管理させ、小中学生がルールを守ることができるだろうか。高等学校の現状からすると、非常に難しいと言わざるを得ない。学校現場の先生方の業務は増えるだろう。
■Society5.0の実現に向けて
いわゆるSociety5.0、つまり「サイバー空間と現実空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」の構築に向けて、今後社会全体が動いていくのであれば、サイバー空間と現実空間の接点にあるICTの活用能力は、これからの時代を生き抜く子供たちにとって必須の能力となる。我が国のこれからの発展と繁栄を期するのであれば、ICT教育を子供たちの手持ちの、しかも人間関係のトラブルを誘発しかねない「スマホ」に頼るのでは心許ない。未来への投資としてしっかりと予算をかけ、学校教材にふさわしいタブレットを準備するべきである。ICT教育の充実と災害時等の緊急対応はそもそも別次元の問題であり、切り離して考えるべきである。緊急対応を懸念するのであれば、児童生徒向けには通話やGPS機能に限定した「スマホ」を開発し、社会全体に普及させるなど、関係企業、教育界が連携して真剣に議論すべき時がきているのではないか。
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