平成29年1月31日
教育の情報化への課題
教育の情報化については既に臨教審第一次答申(昭和60年)においてその重要性が指摘されて以来、情報教育の重要性とともにICT環境に関する条件整備の必要性が指摘されてきた。しかしながら我が国の国際競争力の低下が指摘される中、国家戦略としての目標達成には至っていないというのが現状だろう。
教育の情報化3つの側面
文部科学省は教育の情報化が目指すものとして3つの側面を通じた教育の質の向上を提起している。
①情報教育(子供たちの情報活用能力の育成)
②教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用 した、分かりやすく深まる授業の実現等)
③校務の情報化(教職員が情報通信技術を効果的に活用した情報共有に よりきめ細かな指導を行うことや、校務の負担軽減等)
(「教育の情報化ビジョン」平成23年)
3つの側面とその課題
①情報教育に関しては「情報活用の実践力」「情報の科学的理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点が示されていることは周知の通りであり、そのために平成15年度に誕生したのが教科「情報」である。昨年末の中教審答申では次期学習指導要領において小学校段階で情報技術を手段として活用する力やプログラミング的思考を育成することを求めている。高等学校では共通必履修科目として、情報技術を適切かつ効果的に活用する力をすべての生徒に育む「情報Ⅰ」を設定することとしており、小中高の一貫性が図られることとなる。なお、高大接続システム会議(最終答申)によれば「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」において、教科「情報」に関して「適切な出題科目を設定し、情報と情報技術を問題の発見と解決に活用する諸能力を評価する」とあり、その動向を注視しなければならないが、担当教員の専門性が一層問われることになるだろう。
②教科指導における情報通信技術の活用についてはアクティブ・ラーニングの視点に基づく「主体的・対話的で深い学び」の実現のために、ICTを取り入れた実践事例も積み重ねられつつある。県立高校には今年度からの3年間で電子黒板3台が配置され、徐々に環境整備も進んでいる。課題は全教員の活用を促すためのさらなる環境改善である。また、昨年のPISAの結果で読解力の順位低下が指摘されているが、教師はICT活用と本質的な学力との関連について常に検証することが必要だと考える。
③の校務の情報化については校務の負担軽減につながっているのかが課題である。「教育の情報化ビジョン」において校務支援システム等の導入を求めており、平成24年度には統合型校務支援システムが全学校種平均で約四割の学校に導入されたとのことである。しかし、福岡県の県立高校では担当者が独自でシステムを開発しているのが現状で、特定の教員に多大な負担がかかっている。情報セキュリティ対策を含め予算措置が追いついていないところが課題であり、教員の働き方改革にも大いに関係するところであろう。
教育の本質との整合性
昨年7月29九日、文部科学大臣はその直前にとりまとめられた「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめを踏まえ、「教育の情報化加速度プラン」~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~を策定した。文部科学省では教育の強靱化を実現するために未来社会を見据えて育成すべき資質・能力を育むための新たな学びや、それを実現するための学びの場形成のためにICTを効果的に活用するとして、今後五年間の行動計画を示している。詳細は省略するが、システム化すべき校務を定義した上で統合型校務支援システムを普及促進することや情報セキュリティ対策を前提として授業・学習面と校務面でのICT活用を連携し、データに基づく学級・学校経営を実現するため、実証研究「スマートスクール」(仮称)を平成29年度より実施・検討するということだ。
実現の可能性はさておき、教師側は教育の本質を見極め、新たな情報技術の導入との間でその整合性を検証していく姿勢が求められる。
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