福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成25年6月1日

教育再生を阻む現行の歴史教科書

改正教育基本法と歴史教科書

安倍晋三首相は今年4月、衆議院予算委員会で、「文部科学省の教科書検定基準は改正教育基本法の精神が生かされていない」と述べ、検定制度見直しの必要性を主張した。さらに首相は教科書採択についても同様の視点から見直すべきとの考えを示した。
平成18年に教育基本法が改正され、「伝統と文化を尊重」「我が国と郷土を愛する」という文言が明記された。これに基づいて学習指導要領も改訂され、本来ならば教科書も、その主旨に沿った記述に改められるべきであるが、現行の中学校歴史教科書の内容はかなり問題が多い。まだ国家観、歴史観が白紙の状態に近い義務教育段階において、偏った考えを植え付けられれば、それを後から払拭することは難しい。今回は、この中学校歴史教科書を中心に我が国の教科書問題について考えたい。

教科書検定制度・採択制度の矛盾

教科書検定制度は、本来、偏向教育から教科書を守るためにつくられた制度である。ところが、昭和57年、文部省の検定によって中国への「侵略」が「進出」に書き換えさせられた、とマスコミが誤って報道したことに端を発し、中国や韓国が猛烈に非難を加え、いわゆる近隣諸国条項の設置に繋がったのである。その結果、我が国の歴史教科書は検定段階で中国や韓国など近隣アジア諸国に配慮した記述が求められるようになった。昭和61年には、検定で合格したにもかかわらず中国・韓国の圧力によって、文部省が高校日本史の教科書の記述を改めるように指示する事件も起きている。
次に教科書採択制度についてである。公立小中学校は教科書無償措置の関係から、いくつかの市町村によって構成される教科書採択地区ごとに教科書を選定することになっている。一度採択されると4年間同じものを使用することになる。この採択に関しては、沖縄県の八重山地区採択問題が記憶に新しい。石垣市・竹富町・与那国町で構成される八重山地区において、平成24年度から使用する中学校公民教科書として育鵬社を採択することが決まったにもかかわらず、竹富町の教育委員会がこれに反対し、現在、竹富町のみ別の教科書を使用している。
このように検定にしても採択にしても、正しい手続きに則って一度決定された内容が、国内外の圧力によって変更を余儀なくされているという異常な事態にあり、この矛盾を克服する努力が必要である。

学習指導要領に従わない巧妙な手口

平成24年度から使用されている中学校歴史教科書は7社から出版されており、そのすべてに目を通すと、教育基本法や学習指導要領に沿った記述がなされている2社と問題のある5社に明確に区分される。前者の保守系教科書のシェアは、全国でわずかに4パーセント弱である。つまり、9割以上の生徒は、教育基本法を無視した自虐的な教科書で学んでいるのである。
では、その問題点を指摘する。まず感じることがアイヌや琉球に関する記述の異常なまでの多さである。アイヌや琉球の伝統や歴史を学習すること自体はもちろん間違っていない。しかし、問題は全体とのバランスである。被抑圧民族や植民地側から見た視点、すなわちポストコロニアリズムという新たなイデオロギーが根底にあり、アイヌや琉球を殊更に強調することによって学習指導要領の目標である「国民としての自覚を育てる」ことを阻もうとしているとしか思えない。中には結びの部分で、日本国民としての意識ではなく「地球市民」としての意識を強調しているものもある。
自虐史観も相変わらず健在である。南京事件の記述は、被害者の数に諸説あるとしながらも、「老人・女性・子どもが無差別に虐殺された」といった何の確証もない記述が堂々となされている。
逆に、学習指導要領の目標である「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」ことにつながる事実は無視している。我が国は、第一次世界大戦後の講和会議において、人種差別撤廃を提案している。アメリカのウィルソン大統領などの反対で実現しなかったが、これは世界で初めて国際会議の舞台で人種差別撤廃を訴えたという誇りうる出来事である。ところが、この内容を記載しているのは保守系の2社のみであり、他の出版社の教科書は一言も触れていない。そして看過できないのは、保守系の二社を除いた教科書は、現代史において昭和天皇の崩御や今上天皇の即位を全く扱っていないことである。本文はもちろん、巻末の年表等においても触れられていないのである。その一方で、アイヌ文化振興法やアイヌを先住民族とする国会決議などは年表に記載されている。

揺るぎない歴史観を

以上のように、教科書の検定・採択の在り方、記述内容において、正常化は程遠い状況にある。教育基本法や学習指導要領に基づいた検定制度や採択制度への改変が望まれる。政府与党内ではこれらの問題を踏まえ包括的な教科書法の制定に向けて議論も始まっている。一部のマスコミや運動団体が、国家権力の教科書への介入と批判することが予想されるが、この問題は次代を担う日本人を育成するという観点から左右の思想戦を超えた大きな国民的議論としなければならない。