福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成28年11月30日

今求められる健全な教職員団体



日教組委員長に関する報道

先月、日教組委員長の女性問題や経費流用疑惑が週刊誌で報じられた。真偽の程は定かではないが、その後本人からの説明もなく疑念が広がっている状況だ。「辞任」との報道もあるが、今後どう組織の信頼を取り戻すのか注目される。 
 日本教職員組合(日教組)は昭和22年に結成されたわが国最大の教職員の組織で、各県の単位組合などの連合組織である。公務員組合の中では自治労に次ぐ大きな組織で、全都道府県に組織がある。
 日教組本部は組合員が払う組合費によって運営されているはずであり、今回の疑惑について、まずは内部への説明は不可欠であろう。

教職員全体のイメージ低下につながる危惧

 日教組の組織率は、文部科学省の調査では25%を切り、かつてのような表立った反対闘争などは影を潜めている。教育正常化を目指し、自らを教育専門職として資質、能力の向上を目指して活動に取り組む教職員団体もあるが、学校の教師というと日教組というイメージがいまだに定着しているのではないだろうか。報じられた疑惑は、そうした教職員団体も含めて、教職員全体のイメージ低下につながるのではないかと危惧される。

教育正常化のあゆみ~福岡県教職員連盟~

 そもそも教職員団体というのは何のために存在するのか。福岡県の教育正常化のあゆみに触れながら、考えを述べる。
 日教組結成から10年ほど経過した昭和33年、平和教育を掲げて政治闘争へ邁進する日教組を毅然と脱退して、新組合「福岡県教職員連盟」(福教連)を設立した小中高の教師達がいた。教員の「勤務評定反対」を唱える日教組のストライキに、教育者としての良心の衰弱を憂いたこの教師達は、日教組の左翼的闘争主義を傍観せず、日本の歴史と文化を愛する心を取り戻そうと、日本人にふさわしい教育を推進することを目指した。
 全国組織の設立準備にも参画するも、「政治や労働運動と厳然と一線を引く」ことを主張した福教連と、他団体の意見が合わなかったため、全国組織には加盟せず、教育研究団体として活発な活動を展開する。ここに教職員団体のあるべき原点が示されていると考える。(この詳細は、本連盟「創立四十周年記念誌」に掲載された國武忠彦先生の文章にある)

教育本然の姿と使命感

 次に私たち福岡教育連盟の前身、福岡県高等学校新教職員組合(新高教組)の結成である。昭和47年当時、福岡県の組合支配は依然として勢いが衰えず、組合推薦のない校長の着任を妨害する闘争や、管理職試験の妨害、国旗国歌反対のすさまじい闘争、そして自らの主張を通すためのストライキが行われていた。そういった中での新組合設立であり、草創期の先輩方のご労苦は、筆舌に尽くし難いものであったと聞いている。ここで強調しておきたいのは、福教連同様、教育本然の姿とは何か、そして教師の使命とは何かということが深く問われていたということである。
 行政の毅然としたリーダーシップもあり、福岡県の正常化は徐々に進む。職員団体としての新高教組は教師の研修、特に人間教育のための修養に重きを置くことになる。もともと組合嫌いの教師の集まりなので、平成9年に現在の名称に改め、教育者としての志を高め、さらに力強く正常化を推進することとなった。

次の正常化へ

 現代の教育課題は複雑化している。教師も日々、多忙を極め、尽力しているが、先の見えない社会状況も相まって、苦戦が続いていくのだと思う。しかし、こういう時こそ、先人の思いを汲み取りつつ、「日本にふさわしい教育とは何か」を追い求め、研鑽に励む健全な教職員団体が求められる。
 自らの現場の課題は自らで解決するとの気概を持ち、ベクトルをそろえながら教育課題の解決に挑戦する。こうしたいわば「次の正常化」こそが、あるべき教職員団体のテーマである。
※本稿は平成28年11月10日に産経新聞九州山口面に掲載された「一筆両断」に修正を加えたものです。