福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成2807

大学入試改革と求められる高等学校教育



高大接続システム改革会議「最終報告」


 知識偏重の一点刻みや一発勝負の大学入試からの脱却などを提言した平成二十五年十月の教育再生実行会議第四次提言から、中教審答申を経て、議論が重ねられてきた高大接続改革について、本年三月に高大接続システム改革会議において最終報告がまとめられた。  
すでに答申で創設が盛り込まれていた「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)については、平成三十二~三十五年度は現行の学習指導要領下であり、当面「国語」「数学」の短文の記述式問題とマークシート式問題を実施することを提言した。対象となるのは今の中学二年生からである。新学習指導要領に移行する平成三十六年度からは、科目設定の変更もあることから、その趣旨を踏まえて、特に思考力、判断力、表現力をより適切に評価できるものとすることとなっている。今の小学校四年生からということになる。
 当初答申で提言されていた段階別評価も記述式にのみに適用し、実施回数や時期、採点方法、CBT方式(コンピューターによる出題、回答方式)の導入についても一定の方針はあるものの引き続き検討することとなっており、理念は共有されているものの、まだまだ具体像は不透明であるといえる。

改革の理念


 この改革は、今後の大きな社会変動を見据えた上で、先行きの不透明な時代を生きる子供達に知識だけでなく、多様な人々と協働し、問題を自ら発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質や能力を育成するという大きな理念の下、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を一体的に改革することを目的としており、学校現場でも一定の理解は得られていると考える。

高等学校の現状と不安


 しかしながら、生徒や保護者は当然のことであるが、生徒の進路保障に責任を持たなければならない高等学校側にもかなりの不安があるのが現状だ。
 まず、公平性の担保である。現行の大学入試センター試験は公平であり、問題もよく練られている。一発勝負で一点刻みであるところが問題にされているのであり、基礎学力を見るのには適しているといえる。記述式で公平性を担保するとなると、採点のばらつきをなくすために逆に安易な試験となり、正当な評価となりうるのかという疑問が残る。
 次に学校行事や部活動への影響である。複数回実施については見送られたものの、記述試験となると採点に時間がかかるため、日程の前倒しが考えられる。公立高校の場合、試験の内容をカバーするのに直前までかかる場合があり、直前期のスパートで大きく伸びる生徒もかなり多く存在する。また高校時代を集団のダイナミズムの中で人間教育を行うことのできる最後の段階ととらえており、学校行事や部活動にかなり力を入れているのが現状で、そこを削減するようなことになってはならないというのがと多くの関係者の思いであろう。
 また危惧されるのは、中下位の生徒たちが新たな入試制度に対応できるのかという点である。いわゆる進学校の生徒はある程度対応できると思うが、一方で基礎学力の習得に時間がかかる生徒たちもいる。こつこつと頑張る生徒が正当に評価されることも大事にされるべきではないだろうか。

求められる高等学校教育の在り方


 まずは基礎・基本の力を正確に測定することが必要であり、さらに大学がアドミッションポリシー(入学者受入れ方針)をより明確にして、求められる学力、生徒の意欲や伸びしろをじっくり見て選考するしくみを考えるべきである。現行ではセンター試験のみで合否がほぼ決まるケースもあるが、個別試験のより一層の充実が図られるべきある。
 高等学校に求められるのは、キャリア教育の視点から見た授業改革である。将来を見据えた「学び」の構築と「目的意識」の醸成に一層力を入れなければならない。さらに高校時代に育てた資質・能力が大学でどのように発揮され、社会の中で通用する人間に育っているのか、きちんと追跡、検証し、指導に活かすサイクルを確立することが求められるのではないかと考える。

※本稿は平成二十八年六月二十八日に産経新聞九州山口面に掲載された「一筆両断」に修正を加えたものです。